ガンタンクR44は「ガンダムF91」に登場する機体です。
一見地味ですがこのキット、劇中の活躍とともに侮れない逸品です。
「薄グレーのポリランナーがすごく目立つ」
「今だったら最初から設定のカラーリングがこうはならないかもしれない」
「シールはホイルではありませんのでつや消し、マーキングシールも付属」
「組み立てただけで設定に近い仕上がりに……ホントに近いな」
パーツも少なく、30分ほどで組み立てられます。
このキットというか、F91シリーズは全て1/100スケールで展開されています。
劇中の設定との兼ね合いですね。
足元のグレーのパーツは変形用手首、白いパーツは劇中の小道具です。
今だとこういったオマケ的パーツは付属していないことが多いですよね。
「ガンタンクなのにガンダムよりも色分け・可動・変形を高水準でまとめた優等生」
見た感じかなり出来が良いのですが、関節部はポリパーツ丸出し、というかポリパーツにモールドがあります。
この時代、ポリパーツは可動のみならず、造形部分も担当していました。
意外にもポリパーツが露出している時代は長く、ほぼ完全に隠れるようになるのはHGUCシリーズが始まって少し経過してからです。
HGUCの古い方のギャンなどはポリキャップ露出というより、このガンキャノンR44と大差ない状態です。
「F91だと頭上から不意打ちされることが多い。注意しないと首を蹴り飛ばされるぞ!」
F91劇中ではガンタンクなのに主人公が搭乗するという大躍進。
力強い機体、という感じではありませんが、序盤の戦闘描写として映画を彩っています。
「とはいえなにぶん昔の映画、記憶も怪しい……」
ガンダムも「逆襲のシャア」が終了して宇宙世紀外伝作品が中心だった時代です。
テレビシリーズだと「Vガンダム」を待っている頃です。
F91シリーズは(前身のF90も)新しい試みとして「システムインジェクション」が採用されているのが特徴です。
ガンタンクR44では使われていませんが、F91のガンプラは一つのパーツの中で色分けして成型するという超技術です。
残念ながら、塗装派が多かった当時は塗りにくくなるので別パーツの方が嬉しいという評価でした。
「ユニコーンを見た人なら、この機体の先祖が何か分かるはず」
ガンプラはHGUCの設計で基礎的な完成を見ることになります。
つまり、基本的な色分けが出来ており、関節内部はポリキャップが挟まっている、という形ですね。
F91の辺りまでは色分けの試行錯誤が続いており、実験として導入したのがシステムインジェクションだったのでしょう。
なおシステムインジェクションの技術は後のリアルグレードのフレームや、Figure-riseシリーズに活用されることになります。
「変形! 手首以外は完全変形だ! 完全変形は最新キットでもそうはないだろう!」
実はランナーを複数の色で形成する「いろプラ」もシステムインジェクションの一種です。
いろプラによって、このガンタンクR44のように組み立てただけで劇中の設定色を再現できるようになり、それが一般化してく時代。
まさにガンプラ過渡期ですね。
「一個前のSTARDUST MEMORYは多色形成ではないから、F91シリーズは割と歴史的」
F91はいろプラとシステムインジェクションとクリアパーツの全部乗せでした。
このガンダンクR44もカメラ部分にクリアパーツを採用しています。
端役である機体にもカラフルな色合いとクリアパーツが与えられているのは挑戦的です。
ところですぐ上の写真、背中の赤いブースターノズルに時代を感じませんか……?
「ノズル? キャタピラがポリパーツ? まぁそんな時代も一瞬だよ」
ノズルが真っ赤というのもさることながら、キャタピラもポリパーツです。
プラスチックにしてほしいとか思う以前に、そのキャタピラ巻きつけの手法とか普通の戦車模型にも採用してほしいと思ってしまいます。
細かい部分の色や処理、それが「おおらか」に設計されていると感じます。
「お店の棚で会おう。でも、俺はレアだぞ?」
ガンタンクR44は、再販されるとガンタンクなのにガンダムF91を差し置いて売り切れになることが多いです。
それだけ、これが良いキットであるということですね。
何かの機会に見かけたら、おおらかな、過渡期のキットを手に取ってみて下さい。
それは記憶に残る模型体験となります。
以上「1/100 ガンタンクR44 レビュー と ガンプラ旧キットの過渡期に思いをはせる」でした。