久方ぶりの、秘密のゲーム部屋へようこそ。
期待の新作アクション、アストラルチェインをプレイしました。
少々思うところがあったのでレポートとしてまとめてみます。
ネタバレ排除には細心の注意を払っておりますので、その点はご安心下さい。
「警察官として、異形を操り人類に平穏を取り戻せ」
さて、完全新規タイトルという事で期待されていた方も多かろうアストラルチェイン。
発売日から遊んで大体25~30時間でクリアしました。
難易度はノーマルモードに相当するであろう「有利」を選択しました。
基本的には見えているミッションを全てこなし、攻略を急いだ訳でもないので、近年のゲームとしてはややスッキリしたボリューム。
短いように聞こえますが、このゲームの最も優れた点はその密度感。
60時間はプレイしたかのような満足感があり、ある意味最近の重厚長大主義的なゲームの逆を行く現代的なゲームです。
しかし満足感があり、現代的ながら、以下に続くレビューはどちらかと言うと否定的なモノになっているかと思います。
では順を追って中身に迫ってみたいと思います。
「これが主人公であり、選んだ方がプレイヤーキャラとなる」
1 「物語」 状況が目まぐるしく移り変わり、飽きさせない迫真のシナリオ
アクションゲームにおいて、シナリオは添え物という事態に度々出くわすが、アストラルチェインのシナリオは極めて優秀。
一息つけると思った所に新たな展開があり、警察官という設定も活かしながら現場の混乱を表現しています。
では奇抜な内容なのかと言うと、その逆で、王道を行くヒーローものというのが話の骨格です。
導入から完璧に近く、最序盤から自分自身が最後の希望となる、少々絶望的過ぎる状況も上手く納得させています。
良好なシナリオは最終盤においてのみ急ぎ過ぎな傾向がありますが、ほとんどケチのつけようもない出来です。
後のインタビューでは三部作の一作目をイメージしているという話もあり、確かにクリア後も物語が設定的も閉じておらず、まだまだ広がりを持った世界観です。
「五体のレギオンを使役せよ」
2 「相棒」 操作はシンプルだが扱いにくいバディ
このゲームの核の一つであるレギオン。
異界から現れた化物であり、主人公達は彼らを鎖(チェイン)によって支配し、自らの力へと変えています。
ゲーム上では五体のレギオンが登場し、いずれか一体を選択してフィールドに呼び出すことができます。
選択と言っても常に切り替えることができ、ステージギミックではそれぞれの能力を活用する場面があります。
操作は簡単で、出しておけば自動で敵を攻撃し、ボタン長押しとスティックで好きに移動させることも出来ます。
好きに移動させる、という機会はあまりなさそうですが、実際にはかなり多く、その時カメラが固定されたり何かに引っかかったりとトラブルが絶えません。
レギオンを移動させた先で、そこに向かってジャンプする操作もその機会も多いのですが、精密な操作を要求される割りにレギオンがズレてしまったりと、爽快感というよりはストレスの元になっています。
「ところでレギオンと言われると……」
あの(個人的)名作「カオスレギオン」を思い出します。
アストラルチェインはバディアクションという事で一体しか呼び出せませんが、カオスレギオンでは文字通り軍団(レギオン)として何体も味方を呼び出せました。
操作もほぼ2ボタンで完結しており、アストラルチェインよりもシンプルさと言う面で上を行っています。
残念なのはアストラルチェインでは爽快感が薄い事。
カオスレギオンは超常の力で敵を吹き飛ばす印象ですが、アストラルチェインは敵を使役して何とか対抗するという印象です。
演出したいゲーム性が違うのかもしれませんが、クリアした今でもカオスレギオンが頭をよぎって仕方ありません……
「人類に襲い来る事件に挑め」
3 「捜査」 情報を集め、事件に迫っていく
主人公は警察官なので、マップで情報を集め、事件の全体像を捜査していきます。
……これは設定そのものとの相性なのですが、何か妙な事件があったとして、それは当然異世界の化け物が犯人に決まっています。
そもそも主人公達は対異世界の化け物組織な訳ですから、犯人がどんな存在かは分かって出撃しています。
更に、異世界の化け物は特に知能をもって喋るという事はしません。
基本的には人間を襲う獣といった扱いです。
何が言いたいかと言うと、アストラルチェインの捜査パートそのものには私は全く惹かれる要素がありません。
敵に何か考えがあるのか、目的を持って行動しているか、という深読みが全く出来ず、化物たちはただ人間を異世界に連れていきたいだけです。
ではゲーム的には捜査パートはどのような着地を迎えるのか?
……クイズです。
情報収集した単語を会話中に適切に選択できれば、ポイントが与えられ、リザルトでより多く経験値を貰うことができます。
「ウィッチャー3」というゲームをご存じでしょうか?
細かい説明は省きますが、ウィッチャー3でも様々な事件が起き、それを捜査する状況があります。
ウィッチャー3の捜査パートは常に興味を惹かれるもので、その理由はプレイヤーもの深く考えさせるものだからです。
犯人は何が目的で、どう行動したのか? 現場のこのアイテムは何を意味しているのか?
最後はこの事件の理解度を試すような選択クイズではなく、暴いた真相にどう相対するのかという自分自身の選択を迫られます。
証拠を探したり、臭いを追ったり、ゲームの操作的には同じことをやっているのに見せ方の僅かな違いで体験が全く変わってしまう、というのは私がプレイ中にずっと考えていた点です。
この点はダメだと言いたい訳ではなく、折角実装した捜査パートにあまり興味が持てないというのは「勿体ない」と強く思ったのです。
「アイリス起動」
4 「冒険」 視認しにくく面倒な、リアルな世界と異世界、そして拡張現実
主人公達はコンタクトレンズ型の装置「アイリス」を通して世界を見ることができます。
ボタン一つで、様々な人物や調べられる場所などをマーキングできる機能は、オープンワールドのゲームなどを中心に珍しくありませんが、アストラルチェインは近未来的なフレーバーに富んでおり、音声も相まって格好良いです。
そこまでならまだよかったのですが、ゲーム的にはアイリスを使っておけば良いという単純な話でもありません。
確かに必要なモノがマーキングされはするのですが、画面が暗くなり、建物や通路などの縁はマーキングされないため、今度は「進める場所なのかどうか」が危うくあります。
平たく言えば、ゲーム内で明るい場所なら見えますが、暗所だとアイリスを解除しないと前が見えません。
作った側としてはアイリスが便利すぎると通常モードの意味が無いと思ったのかもしれませんが、だったら「画面効果を程々にして常にアイリス起動」という形でも良かったのではないかと思います。
「レギオンと共に異世界を進め」
アイリスの視認性の悪さは異世界で特に顕著。
1ステージにつき大抵一回以上は異世界へ行く事になりますが、異世界ではアイリス起動状態での画面の見にくさがスゴイ、ただただスゴイ。
じゃあアイリスやめれば?
そうもいかない事情があって、アストラルチェインは異世界でもそうでもなくても、マップに「レギオンを近づけると消せる欠片」みたいなものがあります。
この欠片を消すことでステージの評価が上がり、「汚染除去率」なる比率も上昇していきます。
性格の問題ですが、まるきり無視するのは少々憚られる……
それで、異世界は全体的に赤っぽい色なのですが、その欠片も赤っぽく、アイリスを起動しないと見えにくい。
異世界じゃなくても所構わず現れる欠片を確実に視認して除去するために、アイリスは必須です。
だが、令和の空の下の最新ゲームで、ここまでクラシカルなモノ集め(今回は消しているが)をやらされるとは思いもよりませんでした。
「レギオンのギミックも活かしているとは言いにくい」
この異世界パート、不満は他にもある。
アストラルチェインの異世界はいわばアスレチックステージになっており、空飛ぶ的を弓で射抜いたり、すぐ消える床をレギオンに乗って駆け抜けたり、床板を押して穴を越えたり、毒ガス地帯をシールドを張って通り抜けたりします。
前述した、レギオンのいる場所にジャンプする機会も多いのですが、勝手にズレるし引っ掛かって穴に落ちるし、異世界と言うだけあってストレスが溜まります。
私がこのゲームで受けたダメージの大半は穴に落ちた事に起因するものです。
「SEKIRO」だってもうちょい落ちないぞ……
異世界はレギオン固有の能力を発揮する場所でもあるのですが、むしろこの場所のギミックを解決するためだけに固有の能力がある印象です。
レギオンは呼び出すと消えるまでの制限時間があり、ゼロになると暫く呼び出せなくなります。
急に戦闘になると困るので基本的にはレギオンをしまっておくスタイルで進むことになりがちです。
その為「より早く移動できる」という便利そうな能力も使用する機会が限定されます。
戦闘中も使えなくはないのですが、それより普通に攻撃した方が有利になる事が多いため、やはり固有の能力はギミック解決に終始しています。
「市民からの依頼も解決せよ」
マップ上では市民や同僚からの依頼を受ける事も出来ます。
受けないと最終的な評価に影響するのでほぼ強制ですが、内容はお使いが大半です。
〇〇を持ってきて、〇〇へコレを持って行って、怪しい人物を隠れながら追う、暴徒鎮圧、急に現れた化物の処理……
ゲーム後半になってくると私の場合はウンザリしていたのですが、内容そのものはよくある感じです。
この部分もウィッチャー3と比較できるのですが、アストラルチェインの依頼は「お使い」であり、ウィッチャー3は「介入」でした。
自ら選択肢を持って世界に介入できるかどうかが感情移入の度合いを変えているのだと言えます。
等々、面倒ごとの多いマップ周りですが、一方でそこまで広くはありません。
欠片の掃除や依頼、隠しアイテム等が狭いマップに効果的に配置され、ただ歩いているだけなのにやる事がある。
移動時間だけが長くなっていくオープンワールドゲームとの違いはそこにあり、プレイ後の満足感と密度感を生んでいます。
依頼の部分だけ最近のオープンワールドRPGを取り入れたため、ステージクリア型なのに「自由参加で、しかし最終評価点に影響のあるタスク」という歪な構造を持ってしまっていますが、調整次第ですぐに改良できる部分ではないかと思います。
「ベヨネッタを制作した過去を持つ会社が作る、アストラルチェインの戦闘とは?」
5 「戦闘」 シンプルと単調、紙一重を見切り続けろ
さぁ、戦いだ!
アストラルチェインの戦闘は、一言で言うとシンプル。
レギオンを呼び出し自動で攻撃させながら、自身は三つの武器から一つをリアルタイムで選択してボタン一つで攻撃し、連続攻撃の最後の一発に合わせてレギオン呼び出しボタンを押し、必殺の一撃を繰り出す。
敵の攻撃を受ける刹那、回避ボタンを押し、更に攻撃ボタンを押すことで強力な反撃を繰り出す。
基本は以上です。
敵も多彩な攻撃パターンを持つので状況を見て回避を続けないといけなかったり、レギオンのスキルを使ったりする場合もありますが、上記の攻撃と回避を繰り返し続ける点は全くブレません。
敵によっては飛んでいるから警棒の効果が薄いので銃に変更したり、弓を装備したレギオンが有効だったりという相性はありますが、基本的にどんな武器・レギオンでも倒せない敵はいません。
あまりにも単調で物足りない雰囲気がありますね。
レギオンごとに派手な威力を持つ技などがあるとまた違ったのですが、クリアまでに使える技はどれもこれも地味です。
一方でシンプルさは遊びやすさにも繋がっています。
要素ばかり多い最近のゲームの中にあっては逆に新鮮でもあり、とっつきやすく、数回戦えばラストバトルまでどう戦うかの基本はマスターできると言えます。
「次回作へ、繋げ」
6 「核心」 このゲームの核はどこにあったのか?
アストラルチェインは意欲的なゲームでした。
直感的な戦闘、アドベンチャー的な捜査、ステージクリア型でありながらオープンワールドを意識したマップ・イベント構成、近未来的なストーリー。
製作者側はこれら全てをまとめて「ゲーム体験」として演出していました。
私の選ぶ「核」はアクションアドベンチャーゲームとしての側面にあったようです。
魅力的なストーリーとヒーローとして事件を追い、敵をも使役して戦うという部分はストレスを感じた他の要素を補って余りあるものです。
しかし見にくく、操作しにくく、旧態依然とした依頼や、アスレチックを強要される異世界等のマップ部分は楽しいとは思えませんでした。
私がハイスコアを目指す人ならば、より正確な操作とマップへの理解に対して嬉々としてプレイする事ができたでしょう。
このゲームへの不満を一言でまとめると「全ての要素が粗削り」であった点です。
新たなる「ゲーム体験」を看板にするのならば、このゲームの点在する核に、更に磨ける部分がありました。
時折挿入される操作できる特殊なイベントなどは臨場感がありましたが、数が少なく、実装に迷いがあったように感じました。
プレイヤー個々人に核があるように、それが作り手にあっても良いように感じたのです。
では最後に、良かった部分は?
それもまた1~5まで書いてきた部分です。
このゲームに破綻はありません。
ずっと書いてきたのはわりと細かい部分の話で、基礎すら出来ていないゲームもある中、完全新規でここまで平均点の高いゲームはそう多くありません。
このレビューで悪い印象を持った方も、書いた私に不満を持った方もいるかもしれませんが、アストラルチェインは間違いなくプレイヤーの事を考えて作られた良いゲームで、私自身も貶めるつもりなどは全くありません。
少なくとも、久しぶりにゲーム関連の感想を書こうと思わせる程良いゲームでした。
そして、思った事を正直に書き残す事は、このアストラルチェインにとってそう悪い事ではないとも思いました。
それくらい次回に期待が持てる内容だったし、アストラルチェイン2が出たら、私は絶対プレイします。
願わくば、レギオン達がフィニッシュで敵の核へと手を伸ばすように、多くの人がアストラルチェインへと手を伸ばし、ネット界でその感想と繋がりたいものです。
以上「アストラルチェイン レビュー 近未来完全新作アクション、あなたのゲームの核はどこか?」でした。
限定版には裏設定の載った資料が付属しているそうな。あと少し早く知っていれば……