ガンプラやら戦車やら、色々なプラモデルの箱が積み上げられている。
その正確に誤った使い方をされた押し入れの中から、一箱取り上げた。
当時何を思って買ったのか思い出せなかったが、しかし組み立ててみることにする。
「白、に見えるがキャラクター性を尊重したのか薄いグレー」
「武器は一緒くたに青、それは正しいことなのかもしれない」
「最小限のパーツ割で最大の効果を狙う」
「この中にあって黄色ランナーはあまりにも眩しい」
「エクスタンダードではシール面積最大規模か」
「横の小さいパーツは説明書によると、ジョイントパーツとのこと」
黙々とシールを貼り続けていた。
これだけシール面積が多いとなると、少々の手間もかかるというもの。
前にエクスタンダードを作った時は「さすがに塗装しなければ」と思ったが、ふと考える。
「低価格キットの宿命、肉抜き。だがどうせ正面からしか見ないから、これは正しい」
ガンプラに色を塗るのは、果たして多数派なのか?
実は皆、シールで完成させているのではないか?
この広大なシール面積を持つキットに、シールを貼ったらどうなる?
「俺はもう選んだんだ、シール貼るって!」
ガンプラも慣れてくると、部分塗装だの何だのと言いだして、まるで塗装することが当たり前みたいな心持になってくる。
更に、塗装した方が偉いとか考えだすのだ。
「ちゃんとタッチゲート使うから!」
こうなってくるとイチから考えないといけない。
普段はニッパーを使うが、今回は幸いにもタッチゲートを搭載したキットだ。
日ごろの鬱憤を晴らすように、手でパーツをもぎ続ける。
「SDなのにギリギリ両手持ちが可能。普通にスゴイ」
パーツがえぐれたり痕が残ったりするが、まぁいいだろう。
さて、シールを貼るぞ。
「既にお気付きだろうが、塗装しなくても大した問題がないという衝撃」
何だと、そんな所まで細かくシールがあるのか?
腕とか腰のシール分け芸術的だな……
等など、シール分けとか普段出てこない言葉が飛び出すが、果たしてその出来は戦慄をおぼえるようだった。
二、三歩離れてみれば、それは塗装した場合と大差がないのだ。
「パルマフィオキーナごっこ。謎ジョイントより平手が欲しかったのがホントの話」
プラモデルとは、いかに満足感と達成感を得られるかが一つの基準だろう。
自分の好きな見た目のオモチャを手に入れられるか、というのもあるだろう。
ならば、そこにシールだろうと塗装だろうと貴賤は無い。
欲しかったものは、今手元にあるか?
「武器が薄いな、前のBB戦士から……いや、これ以上はやめておこう」
気楽に組み立てられるこのプラモデルは、確かに手元に完成している。
シールは自分の望む限りキレイに貼れたので、ちょっとした達成感があった。
そして、このデスティニーガンダムに満足もしていた。
「まだガンプラが作りたいのかって? ああ、そうだが?」
前にエクスタンダードを組み立てた際、不遜にも全塗装が偉いとか考えていた事を思い出す。
「これだけ手間をかけているから」等と考えだすからプラモデル趣味とは厄介だ。
そうだ、正解はプラモを「楽しむこと」だ。
最初から、偉いとか下手だからとか、そういう話ではない。
もう一度、組み立てたガンプラを見てみる。
久々にシールを楽しく貼ったのかもしれないと、そう思う。
それは、しばらく忘れていた感覚だった。
ややあって満足したので、デスティニーガンダムを横目にコーヒーを淹れる為、席を立つことにした。
「SDEXスタンダード009 デスティニーガンダム レビュー と 素直にシールを貼ってみた話」 了