画面に突然、ガンダムらしきものが現れた。
似ていても明らかにガンダムではない彼らだが、さりとて説明がある訳でもない。
しかし気がつけば彼らとは、一年戦争終結まで共に戦うこととなった。
ご存じ旧キットのジムです。
「この一体形成を目に焼き付けろ」
「挟み込みと分割線はプラモデルの華だ」
「だが時を経てもホントにランナー状態で塗装して良いものかという疑問が」
箱を開けると目に飛び込んでくる「弱緑」が鮮烈です。
実際には真っ白の整形色にもできたのでしょうが、アニメだと結構緑色です。
これは意味不明な色ではなく原作再現なのです。
「これ程洗練された組み立て前の光景があるだろうか。 この完璧な光景には、つまみはいらないがお酒が必要だ」
旧キットは今見ると全部プラ関節ですし、分割も簡易で何だか頼りなく見えます。
パーツ数もすごく少ないので下手をしたら説明書とか見なくても大丈夫なのでは? 等と考えてしまいそうですが、間違うと当然大変なことになるので、ちゃんと見ましょう。
「紛うことなきジムである」
30分とかからない内に、連邦の顔なしガンダムが姿を現します。
最新のガンプラは、何かを考えている余裕がありません。
「次はここを組み立てる」と頭がランナーのことのみを考えているようです。
旧キットは、雑念が湧きまくるキットです。
腕の次に足を組み立てるのは、ガンプラに慣れてくると何だか大ごとになってしまいます。
旧キットは足の次に何が来ようが全然気になりません。
「股関節組み立てるの面倒……」とか考えているキット的な尺が存在しないのです。
まぁ股関節ブロックとか無いですしね。
「各部関節が(申し訳程度に)自由に可動する」
最新の食玩とかにも可動範囲はダブルスコアで負けています。
各パーツの分割がシンプルかつ簡素なのです。
片足6パーツです、最新キットなら頭だって6パーツはありますよね。
「なだらかに下がっていく肩のライン! ジムが強そうじゃダメなんだよ」
旧キットジムを悪く言うつもりは全くなく、むしろ感動すら覚えています。
明らかにガンダムより弱い肩のシルエット、丸みを帯びた顔、ジムのキャラクターを完璧に再現しています。
一方で初代ガンダムキットより後発だけあり、手首の差し替えや組み立てやすさも進歩しています。
特に挟み込みの肩関節に若干の「遊び」があり、ポーズ付けに一役買っている所など溜息がでます。
「中身が完全に空洞な為か、バランスの悪い姿勢でも自立できる」
プラモデルを作るとは、自分にとって何であるのか。
原始のガンプラは、そうした根源的な問いさえ投げかけてくるようです。
旧キットは300円なので、もう少し足せばHGUCのガンプラが買えます。
にもかかわらず、接着剤を使い、今見るとさして格好良い訳でもない古いプラモデルをなぜ作っているのか。
そして完成しても、塗装しなければ明らかに物足りない。
じゃあ仕方ないからガンダムマーカーでも買ってくるか?
そう、旧キットは今や自分に問うキットとなったのです。
「味のあるキットには、味のあるビームサーベルが」
組み立てたいのか?
パーツをきれいに整形したいのか?
塗装をしたいのか?
飾りたいのか?
組み立ての30分間に「次どうしよう?」と、雑念を掃いては捨て、また掃いては捨てることになります。
「完成したら、とりあえずポーズをつけて遊ぶのが普通じゃないの? ジム(300)」
合わせ目の処理や表面をきれいにし、可動改造をしても良いし、物足りないディテールを追加しても良い。
そして、塗装に突入する。
最新のガンプラと、本質は何も変わっていません。
なのに旧キットがこれだけ「気楽」に組み立てられるのは、さっさと「形」になるからでしょう。
仕方なく、面倒な、と思ってしまうような組み立てが元々入っていないキットなのです。
ジムに会うためにキットを手に入れれば、すぐに会うことができます。
少々タイムラグのある新しいキットと違うポイントです。
「組み立て中にお酒が無くなったので、ちょっとコンビニ行ってくる」
オーバーテクノロジーの塊である最新ガンプラも、かつては気楽なキャラクターモデルでした。
その気楽さに戦車を作っていたモデラーが飛びつき、ガンプラブームが起きました。
旧キットを作ることで、懐かしい少し昔を振り返ることができます。
そして今、あなたは何を作るのか?
以上「1/144 ベストメカコレクション GM(ジム) レビュー と 旧キットの呼び声」でした。