日本でも有名になってきたミニチュアゲーム、ウォーハンマー。
黒のアーカン(写真一番上の目立つヤツ)はファンタジックな世界観を持つAOS(エイジ・オブ・シグマー)のミニチュアです。
日本のプラモデルとは別種の進化を遂げた、まさに生きたプラモデルです。
「いきなりスマヌ、この頃は撮影ボックスが無かったのだ、後半届くから……」
ランナーを見ても何がどうつながるのかサッパリ分からないプラモデルです。
この場には写っていませんが、一番上の写真にある全てのミニチュアがセットになってる「スケルトン・ホード」を購入しました。
お値段11500円(税込み)、高いね! パーフェクトグレードかよ!
……だがその感覚は日本のプラモ業界の基準に過ぎないのも事実。
「組み立ても結構時間がかかるのだ」
完成まではあまり手を加えなくても二時間強かかりました、接着剤が必要なのでご注意下さい。
塗りにくくなりそうなので、骸骨の化け物の胸部分の装甲はまだ接着していません。
組み立て中に「ここがコレにくっつくのか……」とか関心していると更に時間がかかります。
「塗装はブラックサーフェイサー以外はシタデルカラーでお送りする」
いきなり色が付きました。
幽霊と骸骨の部分に、この世ならざる感が。
実はコレ、たった二色しか使っていません。
グレーの上に、薄いグリーンを塗っただけなのです。
「黒のアーカンは乗っている方だ、念のため」
久しぶりにミニチュアを作るのでエコノミースタイルで塗っていきます。
具体的には、基本的に下地+上にのせる薄い塗料、という工程のみです。
まだ骨部分は下地を塗っただけですね。
骨やら幽霊を塗るという経験がある日本人がどれだけいるのか……
「果てしない道のりに見えるが、ここまで3日かかっておらぬ」
頑なに面倒を回避するため2色以上重ねません。
眠い時に塗装をすると、はみ出す。
というが今回の教訓でしょうか。
「不死王様に撮影ボックスを賜った」
完成です。
組み立てから塗装完了まで4日、大体10時間でしょうか。
足元はタミヤの情景テクスチャーペイントを使いました。
不死者の軍勢のセンターピースと言えるミニチュアです。
色々骸骨なのに生きている感じがする……
「異界のカラクリとサイズ比較だ」
アーカン小さいな!
金の装飾とかは気持ちの余裕のある時に塗るのがオススメです。
このサイズ比較でも分かる通り、ディテールの洪水ですね。
ガンプラとは設計思想も商品の属性も違うのです。
「甦れ死者の軍勢、出陣だ! ……え? 他は出来てない?」
ミニチュアゲームは日本では全くといって馴染みのないものです。
しかしイギリスで生まれたウォーハンマーは世界に広がり、日本にも進出しています。
隙あらばガンプラ等と比べてしまうのは、ある意味仕方のないことです。
日本は世界中のプラモデルが集まる模型天国。
ミニチュアをプラモデルの文脈で理解しようとするのは当然と言えば当然なのです。
「……まぁ一個作るのもガンプラとは違う覚悟がいるしね」
これだけ精巧なプラモデルを、あくまで「ゲーム用のコマです」と言って販売している。
プラモデルの精度は完璧に近く、パーツがはまらない等ということもない。
謎の敗北感すら覚えますが、ガンプラとは別の方向に進化した商品なのです。
ガンプラは「組み立てて飾る」を極めたものです。
一方でウォーハンマーは「組み立てて塗ってゲームしてコミュニティを築く」所までパッケージにしています。
物語上での活躍、戦場での能力もまた、値段に反映させているのですね。
「足元の幽霊だが実は一部が本体と一体形成……誰だろう?」
あくまでゲームの時間を重視する本国の遊び方と、プラモデルとして見る日本では齟齬が生まれてしまいます。
プラスチックのミニチュア以上に、一緒にゲームを遊んだ戦友との時間を価値あるものと考えるのも一つの方向でしょう。
ですが、それでも何かウォーハンマーというプラモデルに惹かれるものがあるならば、作ってみたいと少しでも思うならば、自身の判断でこの高価なプラモデルを手に入れる必要があります。
自らの判断で、です。
「ミニチュアを一個作る、ミニチュアゲーマーの始まりは大体そうであろう」
あなたが家だけで完結したモデラーライフを送る事に、何ら問題はありません。
新しいガンプラや戦車に心躍らせるのも楽しいですしね。
しかし、「せっかくウォーハンマーのミニチュアを作ったのだからゲームも遊んでみたい」となれば話は少し変わってきます。
あなたが自ら選んだミニチュアの軍勢と共に、誰かと戦わねばなりません。
相手も同好の士、話が合わない可能性の方が低い……
そうなれば、あなたのモデラーライフは何かが変わってしまうかもしれません。
「定命の者よ、とりあえず黒のアーカンとか作ってみたら?」
もしもTRPGやボードゲームといったジャンルが好きならば、ミニチュアゲームの適性は高いと言えます。
ミニチュアゲームは、プラモとTRPGとボードゲームのそれぞれの血をひいています。
モデリング一筋でも、ウォーハンマーの魅力を前に趣味を変えられてしまった人は世界に多くいます。
商品展開がストップする心配もまずありません。
ウォーハンマーを手掛けるゲームズワークショップはイギリス有数の大企業ですからね。
「このキットは全3パターンで組み立てられる? そういう事は早く言え!」
ゲームをする人が偉い訳でも、山ほど組み立てる人が偉い訳でもありません。
ウォーハンマーのルールブックには「皆が楽しむことが最大のルール」と記載されています。
ゲームとしてでもプラモデルとしてでも、楽しむことが最大の目的です。
ウォーハンマーはうっかりあなたの趣味生活を一変させてしまう恐れがあります。
だからこそ、この深淵を観光する前に自ら判断しなければならないと言えるのです。
という訳で、試しにゲームズワークショップのHPにでも行ってお好きなミニチュアを気楽に探してみましょう。
以上「ウォーハンマーAOS 黒のアーカン キットレビュー と ミニチュアゲームの深淵の前で」でした。
ミニチュアゲーム、ウォーハンマー、シタデルカラー……まだもうちょっとこのジャンルについて書きたい